フードビジネスにおいて、外食業は食品小売業は同じフィールド上で議論されてきました。しかし、外食業と食品小売業は似て非なるものどころか似ても似つかないものです。
外食業は、長く水商売と同じ括りで扱われてきましたが、1970年以降、多くの先人達の努力によって、株式も公開出来るような一般的な業種として認識される様になりました。
しかし、水商売から発展してきたという潜在意識があったからか、あるいは最終消費者を相手にする商売という理解で判断されたからか、外食業は、小売・サービス業の一部として認知されています。
特に、1980年代から今に至るまで、外食業に対する企業分析や経営分析は、その多くが小売業に対して行われているものを応用発展させて行われてきています。
しかし、外食業はキッチンオペレーションが存在するために、小売業や他のサービス業とは次元の異なる、ビジネスとしての特性があります。キッチンオペレーション、中でも特に調理とはまさにモノづくりであり、しかも多くの独立店においては、熟練を要する職人芸なのです。
この点が十分に理解されることなく、小売業の延長線上で外食ビジネスを組み立てて行くと、如何に店舗から調理工程を省くかという発想に辿り着きます。これは、店舗における生産性向上の取り組みともソリの良い考え方であったため、ファーストフードや低価格チェーンのほとんどが、その方向へと進んでいきました。
キッチンオペレーションを簡素化し、よりお値打ちの価格で料理を提供するという考え方自体は、外食業の一分野として存在価値があるものですが、それを外食業の普遍的な考え方として啓蒙していくことは、外食業が本来持つ特性を見失う危険性が高く、長期的には消費者の外食離れを加速させるものになります。